永井豪の『デビルマン』。

昔から多くの人、
特に連載時に読んでいた世代の人が、
この漫画から受けた影響について語っていますが、
意外なことに、自分の身の回りには、
この漫画をちゃんと読んだことのある人が少ないことに最近気付きました。
よく考えれば当然の事なんですが、
僕世代だと、当時の連載なんかは読んでいないし、
昔のアニメ作品という認識しかない人も多いかもしれません。
確かにアニメ版の方も、天才・辻真先の脚本など、
観るべきところが多い作品ではあるのですが。
でも、やはりデビルマンといえば漫画版ですね。
アニメの正統派ヒーロー路線とはタッチも展開も異なっていて、
黙示録的世界観、人間の醜さ、善悪の転倒など、
重厚なテーマが、コミックスにしてたった5巻のなかに、
ありえないほどの密度・濃度で描かれています。
特に、物語の後半。
人間達が「悪魔狩り」を開始するあたりからの展開は、
何回読み返しても鳥肌が立ちますよ。
人類に対して深い絶望と怒りを抱いたデビルマンが、
「外道!貴様らこそ悪魔だ!
俺はからだは悪魔になった、だが人間の心は失わなかった!
貴様らは人間の心を持ちながら悪魔に、悪魔になったんだぞ!
これが!これが!俺が身を捨てて守ろうとした人間の正体か!
地獄へ堕ちろ!人間ども!」
と叫ぶシーン。
「トランス状態で描いていた」という作者の異常なテンションが、
究極まで高まっていた場面だと思います。
デビルマンの怒りを、凄まじい迫力で読者に叩きつけていて、
寒気を覚えるくらい。
とにかく、漫画というジャンルにおいてだけでなく、
戦後サブカルチャーの転換点とも評される作品なので、
機会があれば是非読んでみてください。
ちなみに、このデビルマン以降、
デビルマン的世界観を描こうとした様々な作品が生まれましたが、
そのどれもが、広げた風呂敷を上手くたためないまま終わりました。
その点、これほどスケールの大きい話をたった5巻にまとめ、
その上、ラストも綺麗に風呂敷をたためた、っていうのは、
いや、本当に奇跡ですね。