1996年8月4日。
日曜日の夜8時。
アトランタオリンピックの男子マラソンがテレビで生中継されている裏の時間帯で、
テレビ史に残る、一つの伝説的コントが放送されました。
当時の人気番組「ダウンタウンのごっつええ感じ」内で放送された、
47分のオンエアがある番組中、実に32分間にもわたる長編コント。
「とかげのおっさん」です。
とかげのおっさん・1
とかげのおっさん・2
とかげのおっさん・3
とかげのおっさん・4
その週の「ごっつ」のオンエアは
同時間帯の裏番組に、アトランタオリンピックのマラソン中継や、
当時高視聴率を獲得していた大河ドラマ「秀吉」の
前半のクライマックス「本能寺の変」の放送が予定されていて、
何をやっても視聴率が悪い事はハッキリしていました。
そこで、「どうせ誰も見ないなら思い切って好きなことをやろう」と、
松本人志が発案し、作られたのがこのコントです。
登場人物はラスト以外、浜田と松本のみ。
簡単な設定とストーリー展開のみが事前に決められていて、
何とそれ以外はほぼアドリブ。
その日、僕は居間でマラソンを見てる家族を尻目に、
一人別の部屋のテレビで「ごっつ」を見始めたのですが、
このコントが始まって10分位経ったあたりから、
何か、歴史上の、とんでもない瞬間に立ち会ってしまったような、
そんな気がしてきて、テレビの前に釘付けになったことを覚えています。
今ならDVDなどで作品として発表されるような種類のものが、
何の予告も無く、唐突にテレビで流されたのですから。
翌日の学校では、お笑いに敏感な奴らは一様に興奮して、
夏補習そっちのけで、その衝撃的なコントについて熱く語り合っていました。
これはテレビの歴史的に見ても事件だと思うし、
実際業界内でも、放送の背景も含めて、伝説の作品として評価されているようです。
今主流のお笑い番組と言えば、
一分ほどのネタを次々紹介するゴングショー的なものばかり。
この「とかげのおっさん」のように、
一つの作品として後世に語り継がれているようなコントが
テレビというジャンルから再び生まれることはもう無いのでしょうか。